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ヘンダーランドの大冒険

(1996年公開)



 見終わったら絶対に、『へん~だへ~んだよ♪ へ~~んだ~~らぁんど~♪』と口ずさみたくなります。これは作中に登場するテーマパーク《ヘンダーランド》のテーマソングで、随所で挿入されるのですが、その気が抜けるような明るい曲調が、だんだん恐怖感を伴うものになってくるから驚きです。

 日常に非日常が紛れ込んで侵食していく、その違和感とそこから生じる恐怖、これが『ヘンダーランドの大冒険』の肝です。新しく出来たテーマパーク、その奥で幽閉されているお姫様。助けを求めるからくり人形。不思議な力を持つトランプ。襲い来る敵。日常にするりと紛れ込んでくる敵。それらがひたひたと背後に迫ってくるように感じられて、スリルにゾクゾクきます。

 遠足で群馬・ヘンダーランドにやってきたしんちゃんは、人形のトッペマと出会い、囚われの身であるメモリ・ミモリ姫を助ける手助けをしてほしいと頼まれるのが始まりです。嵐を呼ぶ幼稚園児と名高いしんちゃんもやはり五歳児、トッペマに助けを乞われても恐怖ゆえに動けないでいます。しかし、終盤のある出来事がきっかけで闘うことを決意するクライマックス序盤はやっぱり主人公です(その闘いっぷりが、彼らしくオバカながらアッパレでまた素晴らしい)。この、しんちゃんとトッペマとの絆がまたいいんですよね……背丈が同じだから友達感覚なんだけど、闘う乙女の凛々しさをもってしんちゃんを導くトッペマ。つまりおねショタ。

 そうそう、このトッペマの声を渕崎ゆり子さん(『少女革命ウテナ』姫宮アンシー役等)が担当されていて、これがまたよいのです。クライマックスで敵の女幹部・チョキリーヌとの決闘で、「トッペマ・マペット……トッペマ・マペット! トッペマ・マペットッ!!」と自身の名を叫びながら立ち向かっていく姿は、小さい人形なのに勇猛果敢で、非常に印象的。劇中で彼女が歌う唄も悲しげな響きながら名曲です。これがラストであんなふうに使われるなんてね……。

 ス・ノーマン・パー先生やラスボスのオカマ魔女・マカオとジョマなど、敵役の得体の知れない不気味さ・強大さも、スリリングな物語に一役買っています。しんちゃんたちの暮らす春日部の日常と、魔法を使って闘うトッペマたちの非日常の世界が、《ヘンダーランド》というテーマパークを介在して交差する、この設定が絶妙です。作中も、日常パート・バトルパート・ホラーパート・ギャグパートが入り乱れながら、全然混乱しないというこのバランス感覚よ……。バトルは勿論、ラストのヘンダー城での追いかけっこは大迫力です。


以下、ネタバレを含む個人的なアレコレ(反転)

 すみません、こんだけ偉そうなこと言いながら、トッペマがチョキリーヌとの闘いのあと消えるシーンの意味が最近になるまでよくわかりませんでした。というか、わかりたくなかったから考えるの拒否してたっていうのが理由かもしれませんが……。最後まで全力で闘い、傷つき斃れ、何にもないように一度起き上がって「また休んだら立ち上がれるから」って言って消える……って、どれだけの気高さなんだろうと思います。
 あと、なぁ、最後の決戦が【踊り対決⇒ババヌキ⇒追いかけっこ】で決着がつくって、どんだけ頭ひっくり返したらそんな発想できるんだろうって今でもよくわかりません(無論いい意味で)。普通だってやっぱり、ドンパチでカタが着くわけじゃないですか。でも、一般人の野原一家には出来ないんだからマカオとジョマの方に同じレベルまで降りてきてもらってるわけですが、それがまったく自然な流れなんだよなぁ。マカオとジョマの底知れないキャラクター性がそれを可能にしているわけですが、それを限られたシーンだけで醸すっていうのがもうどんだけなんだと。計算じゃとてもできない……え? 出来るの……? マジで……? 信じられん……。ふっと我に返ると「いや、ねぇよ」って展開なんですが、観てる方が我に返らないんだもんなぁ……要するにそれだけ単純に面白いんだってことで。幼児体験でこんなもの観てしまうともうすごくハードルが上がって「うへぇ」ってなってるんですが、この域まで達してみたいものです……。



【25周年おめでとう!】
『映画 クレヨンしんちゃん』を勝手に振り返ってオススメしてみた。

◆目次◆
(4/1以降1日1ページ分開放されます)

-まえがき-
ヘンダーランドの大冒険
暗黒タマタマ大追跡
電撃!ブタのヒヅメ大作戦
嵐を呼ぶジャングル
嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲
嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦 
伝説を呼ぶ踊れ!アミーゴ! 
嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾! 
嵐を呼ぶ 黄金のスパイ大作戦 
嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス 
バカうまっ!B級グルメサバイバル!! 
オラの引越し物語 サボテン大襲撃 
-あとがき- 


おねショタ 創作小説 オリジナル ファンタジー
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当ブログ及び小説家になろうにて、『ミス・アンダーソンの安穏なる日々』『八奈結び商店街を歩いてみれば』を連載しました。前者はおねショタ小説で、現在公開休止中です(無敵の女傭兵ミス・アンダーソンを抹殺すべく派遣された羊ショタ執事悪魔(レベル1)のどたばたコメディ)。後者は大阪のどっかにある商店街が舞台のなにわ人情お約束劇です。

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