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暗黒タマタマ大追跡

 後に『オトナ帝国の逆襲』『アッパレ! 戦国大合戦』を生み出す、原恵一監督の劇しん処女作。前作『ヘンダーランドの大冒険』がメルヘンテイストなのに対し、こちらで出てくるのはオカマ3兄弟VSホステス軍団。戦場は健康ランドとか郊外の大型スーパーと、身近に存在するものばかり。物語の核こそ、世界を滅ぼす邪神の封印された玉、というオカルトめいた代物ですが、あとはわりと現実の泥臭い部分をいかにダイナミックに演出するか、で構成されています(敵ボスの能力もまぁオカルトですが)。原恵一監督作品は、この現実味とかオトナの事情の匙加減が『クレヨンしんちゃん』という作品にすごくマッチしていて、いいんですよね……いやメルヘンもファンタジーも勿論いいんですが!

 上述の玉をしんちゃんの妹・ひまわりが飲み込んじゃってさぁ大変。オカマ3兄弟・珠由良ブラザーズの庇護の下、世界制服をもくろむホステス軍団の魔の手から逃れるべく、野原一家の大逃走が始まった! ということで、ロード・ムービーの趣きもあります。映画オリジナルキャラクターたちが大変濃ゆい面子ですが、しんちゃんがひまわりのお兄ちゃんになる、という物語上の盛り上がりがあるので、やはり中心にいるのは野原一家なんですよね。これ、ちょうどひまわりが原作中で誕生してから最初の映画作品で、生まれたばかりのひまわりにみんな夢中で、しんちゃんがやきもちを焼いている、という流れがあったのです。それを上手く話の本筋に入れて、自然としんちゃんが「オラがひまを守るゾ!」ってなっていくのに胸がグッときます。そしてひろしがまたいいアシストを入れるんですよ、いい親父……。

 バトルシーンは珠由良ブラザーズ+事件を追ってきた女刑事・東松山よねと、ホステス軍団+助っ人のボス・ヘクソンが入り乱れての大乱戦。基本肉弾戦ですが、バナナやごぼう、新体操のリボンなど、くすりと笑かす小道具がちょいちょい入ってきて飽きさせません。それでいて、ヘクソンの圧倒的な戦闘力の前に絶望を抱く、そんなシビアさな描写もしっかり入っています。
 冒頭で珠由良ブラザーズが野原一家にことの成り行きを説明するシーンがなぜかオカマバーのショーちっくに描かれたり、決戦地に赴く野原一家たちが道すがらに出会った原作者を殴り倒していくなど、場面場面のカオスっぷりが一層洗練されています。でもなんでか全然分離してないんだよな……すげぇ……。

 中でも、劇場版作品屈指の名ゲストキャラ・珠由良ブラザーズは必見です。近年は、この〝オカマ〟という言葉の持つあれこれからクレヨンしんちゃんでもあまり見かけなくなったオカマキャラのですが、本作の3兄弟は本当に、痺れる完成度です。野原一家との出会いの際、「「「そうよ、オ・カ・マ❤ ――なんか文句ある?!」」」とすごむ名シーンがあるのですが、彼らは自らがそうあることに誇りを持っています。そして、力強く、ときにユーモラスに野原一家を護るその姿は、世の中の偏見や嘲笑をはねっかえすほどのかっこよさ。敵である銀座のホステス軍団にライバル意識を持っている、など事情が軽やかにかわいらしく描かれているのも巧みです。三人の一糸乱れぬコンビネーションは、ぜひ見て頂きたい。

 あれこれごちゃまぜにした闇鍋のような一作ですが、食べてみるとすごいまとまった奥深い味わいが待っています。食べなきゃ損、ですよ!


ネタバレと個人的なあれこれ(反転)

 あと個人的に特筆せずにいられないのは、オカマ3兄弟の次男・ラベンダーです。色気半っっっパねぇ。塩沢兼人さんの艶っぽいお声と、スリット入りチャイナドレス、から繰り出される蹴り。最高です。いまだにチーママのマホ×ラベンダーの薄い本探しているので見かけた方はご一報ください。オカマ3兄弟は長男・ローズが腕力派、次男・ラベンダーが技巧派、三男・レモンがスピリチュアル、とキャラわけが巧妙にされているのがまた堪らんね……よねちゃんもいい味出してる。ホステス軍団側の元プロレスラーサタケがマダオじゃない立木文彦さんなんでなんか嬉しい。

 なんというか、最近までよねちゃんが何のためにいるのかよくわかんなかったんですが、アレだな、彼女はパルプンテなんだって気づいて感銘を受けました……ホステス軍団の戦力は数でも質でも珠由良一族を上回っていて(ヘクソンいなければ質は互角だと思うけど、それでもやっぱり数の差が痛い)、それをひっくり返すために飛び道具が必要で、それがよねちゃんだったんだと。一見戦力外に見えて、ここぞというときに奇跡を起こす(人質になっていたラベンダー&レモンの解放、ヘクソン投身の阻止)……んだけど、それが作為的に見えないっていうのが巧妙で、最近ひとりでずっと唸ってました。

 ヘクソンVS珠由良八人衆もすごくいいシーンなんですが、あれ、絵的に全然野原一家絡んでねぇじゃんwww とニヤニヤしました。そんなシークエンスを延々するっていう度胸と勇気がすげぇなぁと思います。ただ、物語的にはひまわりに、そして彼女を護る野原一家に迫る恐るべき脅威、っていうのを示すためにやっていて、場の緊迫感を出すためのシーンなので、本質的には離れてないんですよね……無駄がねぇ……。↑でも書きましたが、そうした一見バラバラなシークエンスが全然分離していない、っていうこのバランス感覚がホントすごいと思います。これ普通にやろうとしたら絶対空中分解する。なんでこれがあるのかよくわからない。すごい(語彙消失)



【25周年おめでとう!】
『映画 クレヨンしんちゃん』を勝手に振り返ってオススメしてみた。

◆目次◆
(4/1以降1日1ページ分開放されます)

-まえがき-
ヘンダーランドの大冒険
暗黒タマタマ大追跡
電撃!ブタのヒヅメ大作戦
嵐を呼ぶジャングル
嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲
嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦 
伝説を呼ぶ踊れ!アミーゴ! 
嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾! 
嵐を呼ぶ 黄金のスパイ大作戦 
嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス 
バカうまっ!B級グルメサバイバル!! 
オラの引越し物語 サボテン大襲撃 
-あとがき- 


おねショタ 創作小説 オリジナル ファンタジー
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当ブログ及び小説家になろうにて、『ミス・アンダーソンの安穏なる日々』『八奈結び商店街を歩いてみれば』を連載しました。前者はおねショタ小説で、現在公開休止中です(無敵の女傭兵ミス・アンダーソンを抹殺すべく派遣された羊ショタ執事悪魔(レベル1)のどたばたコメディ)。後者は大阪のどっかにある商店街が舞台のなにわ人情お約束劇です。

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