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バカうまっ!B級グルメサバイバル!!

 いや、もう、ホント……血沸き肉踊りました。バカバカしい! アホらしい! A級グルメがB級グルメを駆逐するという設定が意味わからん! そこがいい!! 橋本監督がインタビューで、散々バカやってジンとするのはちょっとだけ、というのが本作の匙加減だと仰っていましたが、最後は散々に泣かされてしまいました。2回目鑑賞は最初にケンさんが焼きそば焼いてるシーンで既に泣いた。『ソース is Love』(劇中歌)最高。

 春日部にやってきたB級グルメカーニバル。そこで振舞われるソースの健のやきそばを食べるべく、しんちゃんたちかすかべ防衛隊一行は子どもたちだけで会場に向かうことに。その途中で、謎の女性・しょうがの紅子から「これを健さんに渡してほしい」と伝説のソースを渡されます。実はこのソース、カーニバル会場を突如襲撃したA級グルメ機構に対抗するための、最後の手段。安請け合いでソースを受け取ったしんちゃんたちは、刺客であるA級グルメラヴァーズたちから逃れるため山へ逃げ込み、ソーゼツなサバイバルをすることに……とこのあらすじ書いてる段階で三回くらい泣きそうになってますからね(鼻ズビー)。

 すいません、さっきから泣く泣くばっかり言ってるんですけど、実際はテンション高めのギャグ・ムービーです。上記を読んだだけで「A級グルメ機構てなんやねん! ラヴァーズて! つか最後の手段がなんでソースやねん!」と皆様も何度もツッコまれたことと思います。ご安心ください。作中もそんな感じです。基本ツッコミ待ちです。だが、それがいい……!

 常に笑いが絶えない感じですが、サバイバル中などの描写はわりとシビアです。『嵐を呼ぶジャングル』ではノリと勢いで突っ切りましたが、手持ちの少ない食料などでどう乗り切る……? といった本作の緊迫感にはハラハラさせられます。そして、まさかのかすかべ防衛隊解散危機。いったいどうなる?! という引っ張り方がめちゃくちゃ巧いです。

 普通に見て笑ってスッキリするエンターテイメントとして、かなりハイレベルな仕上がりになっています。が、敢えて、敢えて言わせてください。より深く読み込んでいったときに、本作のストーリーは更なる真価を見せてくれるのです。

 謎の組織が襲ってきて、というと、従来の劇しんでも多々あった勧善懲悪が筋、のように思われます。しかし、敵のボスであるグルメッポーイの造詣は、単なる悪の親玉には留まりません。その過去を知ったとき、観客はもはや彼がただの悪役とは思えなくなります。彼の暴挙は、果たしてただ非難して済まされるべきものなのか? もっと他に、向かい合うべき問題があるのではないか? そうした問いかけが、必要最小限のシーンによって、非常に的確に提示されてきます。

 そうして迎えたクライマックス、ソースを持って会場に駆けつけたかすかべ防衛隊を迎え撃つは、圧倒的な力をもったグルメッポーイ。彼を、その抱えた悲しみを前にして、かすかべ防衛隊が選んだ道。それは、大げさな言い方になるかもしれないですが、〝救い〟と〝解放〟であったように私には感じられました。かすかべ防衛隊に向かって、ソースの健さんは叫びます、「作れ、子どもたち! 希望の焼きそばを!」と。そこからは怒涛の勢いでエンディングまで突入。ここの演出が心憎く、もう有無を言わさずカタルシスで流されます。

 全編を通して、かすかべ防衛隊への攻撃はおバカなものばかりでむしろ笑えてくるんですが、グルメッポーイはクライマックスに一度だけ明確な暴力をしんちゃんに振るいます。だけど、それでもかすかべ防衛隊はグルメッポーイに、手を差し出すのです。当たり前と言わんばかりに、至って軽やかに。その光景は、とても尊いものに思えました。腹へった! と、おいしいね! は、きっと暴力より、この世の何より強い。そんなメッセージが、力強く胸を打ってきました。

 そうした物語が揺るがない説得力を持って、自然になじんでくるのも、細心の注意を払って書かれた脚本と、『クレヨンしんちゃん』という作品のエッセンスを捉えて施された演出のおかげだと思います。脚本は、熟練の脚本家・浦沢義雄氏が本筋を描き、そこにTVシリーズでも担当されているうえのきみこ氏がキャラクター監修をされているので、登場人物の言動にまるで違和感がない……どころか、「そうそう、この子はこういうヤツ」と思わず顔がほころんでしまいます。演出の方も、今回初参加の橋本監督が原作やTVシリーズをイチからさらって空気感を掴んだとのことで、その労力が如実に反映されています。長年親しまれ、愛されている『クレヨンしんちゃん』という作品のネームバリューにあぐらをかかず、大変丁寧に作られた作品です(勿論、初見さんが観て楽しめるほどに、作品そのもののクオリティがともかく高い)。『クレヨンしんちゃん』という作品に、なんとなく距離感を抱いている人にも、ぜひ観て頂きたいです。焼きそばは、君のソバにいる。



以下、ネタバレを含む個人的なアレコレ(反転)

もうホント橋本監督ありがとうしか言えないマジで……これが俺のすきな劇しんだって心から思った……インタビュー見てあの練り込まれ方にもすごく納得がいった。監督の熱意が迸っていて、そこに感動した。

 話のテーマもね、〝食〟ですきなヤツだから倍ハマってるんですけど、でも万人に受けられるテーマだからこそクレしんらしさを出すために細心の注意を払わなきゃいけなくて、そこが抜かりないのが痺れます。そんで極めつけがグルメッポーイとか出して来るでしょ? ああいうキャラクターを個人的に『自分の居場所を得る/守るためにジェノサイドも辞さない』系(例:『輪るピングドラム』高倉冠葉、『リアルアカウント』蔵科ミズキ、『アナと雪の女王』ハンス、『プリパラ』紫京院ひびき)と分類しているんですが、そんでそれめっちゃ好物なんですが、グルメッポーイどストライクじゃないですか。彼は自身の個性とか願いっていうのを親のしつけで厳しく制限され歪曲させられて、そのまま大人になって、「なのにお前らはなんでそんなにうまそうなもん食ってんだ!!」っていうのが今回の暴挙に繋がるわけで、要は八つ当たりですよね。勿論実害を及ぼした段階で彼は加害者なんですけど、「あいつ、小さい頃にケンさんの焼きそば食べれてたらああまではならなかったんだよな……」と思うと、居たたまれないです。抑圧された過去の被害者、という側面も持ち合わせている彼を、ただ糾弾するばかりでいいのか? って気持ちになるんですよね……。そんで、最初は鉄面皮で上品に振舞ってた彼が、終盤に連れて言動や幼児退行していく感じがまたいいんですよ。自分を縛るトラウマに直面する感があって。ソースを捨てるときの「こんなものさえなければ、みんな焼きそばなんて食べれないんだからね」って言いながら目を逸らすのなんて、まさに「焼きそばが食べたかった」って願いの反動じゃないですか。それをああいう形でしか発露できないっていうのは、決して特殊ケースではないく、現実のあちこちにみられるからこそ、余計に辛く感じました。

 そして、そんなグルメッポーイを掻い潜って焼きそばを作り、酷い目に遭わされた彼らにも「仕方がないなぁ」って言ってやきそば差し出すかすかべ防衛隊とか……泣くだろ!! 無理だろこんなん!!! ソース is Love卑怯すぎる!!!! ケンさんが言ったとおり、かすかべ防衛隊が作ったのはまさしく〝希望のやきそば〟で、それを一緒に食べることは、過去の抑圧やくだらない見解の不一致なんか、全部吹っ飛ばすほど力強いんだ。おいしいものを笑いあいながら食べることは、この世の何より強いんだ、っていうその結論が、ほんま、もう、頷きしかない……。だってしんちゃんは、グルメッポーイに殴られてるんですよ? それまでのバカらしい攻撃とは違って、本当に暴力をふるわれた。それでも、軽やかに出来上がった焼きそばを差し出し、グルメッポーイを過去の妄執から救い出す、それってめちゃくちゃ最高にヒーローやん……と涙腺決壊でした。ほんとを言うと、最初見たときはこのグルメッポーイがしんちゃん殴るところ、明確に暴力で嫌だったんですが、それをあえて描いたことに意味があるんだと気付いて一気にすきになりました……。

 あと、キャラたちがみんなそれぞれ「っぽく」ってよかったです。特にネネちゃんが寿司仮面夫婦に惹かれるところすきです(ネネちゃんはエンドロールで目を輝かせて焼きそばを焼くケンさんを見ているところが大変かわいらしい)。今回の騒動を大きくしたで賞はトオルちゃんで、そもそも彼が紅子からソース運びを安請け合いしなければこんなことにはならなかったんですけど、これって従来だとしんちゃんが担う役割(きれいなおねいさんにホイホイされる)だったよなーと。でも不自然な感じはなくて、「あートオルちゃんは物語の感じられる女がすきなんだなー(オタクだから)」と納得でした。キャビアに引っかかる(=視覚的にお色気のあるフォルムに吸引される)しんちゃんと対称的でまたいいですね。遭難中貴重な食料を持っているのが小心者のマサオくん、っていうのも、見る側の緊張感を煽り立てるいいポジションだなぁ(そして、終盤ワイルドに活躍するそのギャップがまたいい)。

 丁度世間を賑わわせていたB級グルメフェスティバルをモチーフにした、っていうのも、小粋だと思います。個人的に〝時事ネタを上手く料理しているかどうか〟っていうのがひとつの大きなポイントなので。というわけで大満足でした。


【25周年おめでとう!】
『映画 クレヨンしんちゃん』を勝手に振り返ってオススメしてみた。

◆目次◆
(4/1以降1日1ページ分開放されます)

-まえがき-
ヘンダーランドの大冒険
暗黒タマタマ大追跡
電撃!ブタのヒヅメ大作戦
嵐を呼ぶジャングル
嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲
嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦 
伝説を呼ぶ踊れ!アミーゴ! 
嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾! 
嵐を呼ぶ 黄金のスパイ大作戦 
嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス 
バカうまっ!B級グルメサバイバル!! 
オラの引越し物語 サボテン大襲撃 
-あとがき- 


おねショタ 創作小説 オリジナル ファンタジー
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当ブログ及び小説家になろうにて、『ミス・アンダーソンの安穏なる日々』『八奈結び商店街を歩いてみれば』を連載しました。前者はおねショタ小説で、2017年7月に電撃文庫より刊行されました(無敵の女傭兵ミス・アンダーソンを抹殺すべく派遣された羊ショタ執事悪魔(レベル1)のどたばたコメディ)。後者は大阪のどっかにある商店街が舞台のなにわ人情お約束劇です。

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