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オラの引越し物語 サボテン大襲撃

 私事ながら、最初本作の設定を聞いたときシビれました。

 野原一家、引越し。春日部を離れ、メキシコへ。

 勿論、そんなことが出来るのは劇場版だからこそ。原作、TVシリーズでは、劇場版が公開されたあとも野原一家は連綿と春日部にて日々を紡ぎ続けるのです。

 だからこその、一発ネタ!
 これっきりの大勝負!

 このネタをどう捌ききるのか、という期待は、大きく裏切られました……当然、いい意味で! 

 メキシコのマダクエルヨバカで発見された新種のサボテン。良質な蜜の取れるその実を輸入すべく、ひろしは勤めているふたば商事から海外転勤を言い渡されます。「家族はいつも一緒!」のみさえの一言で引越しが決まり、野原一家は長く親しんだ春日部に別れを告げ、メキシコに旅立ちます。新天地での生活になじみつつも、まだよそ者感が拭えないでいたある日、マダクエルヨバカで行われたサボテンフェスティバルで驚愕の事実が発覚。なんと、例のサボテンは肉食で、縦横無尽に動き回り片っ端から人間を食べ始めたのです! どうなる、野原一家?! どうなる、マダクエルヨバカ?!

 ということで本作のテーマは『引越し』+『パニックホラー』です。アミーゴはじわじわと迫り寄る恐怖でしたが、今回は動く恐怖。食らう恐怖。サボテンの絵面がポップなので生々しさこそ軽減されていますが、実質ゾンビと変わりありません。更にこのキラーサボテン、かなり激しい攻撃を受けてもノーダメージ。例え体が真っ二つになっても無問題ですし、なんなら近場の別固体と合体します。マダクエルヨバカの住人たちはこのキラーサボテンになす術もなく、ひとり、またひとりと捕食されていきます。
 そんななか、何とか生き残った野原一家とご近所さんたち。ひろしはこの場を捨てて別の街に応援を要請しようと提案しますが、マダクエルヨバカを愛する町長は断固反対。それどころか、「キラーサボテンとは共生できる!」と言い張り、しばしば一同は危険な目に遭うことも。

 本作の見所は勿論、このキラーサボテンの脅威からどう逃れていくのかにありますが、いうなればそれは物語の縦糸。では横糸は、というと、野原一家とマダクエルヨバカの住人たちが決意を持って立ち上がり、団結していく姿にあります。町長を始め、生き残って野原一家と行動を共にする町民たちは個性派ぞろい。常にスマホを手放さず無愛想な女の子・スマホちゃんや、臆病者で勝負から逃げてばかりのプロレスラー・レインボー仮面に、愛と美を謳う陽気なラテン男・マリアッチ、そしてしんちゃんの憧れでもある幼稚園の先生・カロリーナ。野原一家とご近所さんたちがキラーサボテンから逃げることを止め、町を取り戻すために決断するクライマックスはぐっと心を動かします。ゲストキャラもそれぞれがドラマを背負っているのですが、あえて深くは描写せず、断片的な台詞で魅せる脚本の妙がまたたまりません。

 ゲストキャラも熱いですが、それも核となる野原一家がしっかり土台を据えているからこそ! 揺るがない家族の絆を示すみさえ、よそ者ではなく町人の一人として戦うことを決めるひろし、そしてどこでもいつでもマイペースで我が道を往くしんちゃん。マダクエルヨバカの一員として、ご近所さんとともに戦う姿は勇敢です(特にしんちゃんのマイペースっぷりは、歴代の劇しんでも随一! キラーサボテンから逃れるべくバスを運転するシーンは緊迫しているのに爆笑ものです)。
 と、こうした絆の交流が描けるのも、ひとえに冒頭で〝引越し〟が描かれているから。いつもの巻き込まれメソッドでも描けなくはない物語ですが、自分の家がある場所の危機、ということで、真剣さが倍以上違います。春日部からの引越しは最初の30分ほどしか描かれていないのですが、野原一家が過ごした重みがぐっと感じられました。最後のお見送りには春日部のご近所さんやふたば幼稚園の先生方も勢ぞろいします。何よりも、かすかべ防衛隊、そして風間くんとの別れは胸にぐっとこみ上げるものがありました。

 全編を通してパニックホラーのスリリングさとヒューマンドラマの感動がいい緩急で襲ってくるのですが、勿論ギャグを忘れてはなりません。特に、飄々としたしんちゃんの引っ掻き回しっぷりが本作では光っています。解説のイケガミーノ先生など、時事ネタの入れ方も実に巧妙。笑って泣いて、ハラハラして、の極上のエンターテイメントです。間違いなくオススメ! なんですが、作品の性質上クレしんをあまり知らない初見さんが見ると味わいが半減なので、いくつか別の作品を見てからご覧くださいね。




以下、ネタバレを含む個人的なアレコレ(反転)

 今回の敵役はキラーサボテン、という感じなんですが、実際にはこれは災害的なもので、本当の壁は登場人物たちの“弱さ”だったんじゃないかなぁと思います。特に町長・ドゥヤッガオはマダクエルヨバカを愛するがあまり現実を直視せず、その心の弱さが一同をたびたびピンチに陥れることに。レインボー仮面は自らの臆病さのために闘うことが出来ず、スマホちゃんは心配だけど思春期的な葛藤があって家族のことを言い出せない。野原一家は、まだ自分たちがどこかよそ者だという感じがしている。そういうのが終盤に来て反転し、「マダクエルヨバカ防衛隊、ファイヤー!」と立ち上がって決戦に赴く流れは本当にお見事(カロリーナとマリアッチの弱さはなんだったのと聞かれると困る……マリアッチはいいとして、カロリーナは本当に謎。強いし冷静だし情も忘れないし……謎)。

 反転のきっかけを作ったのはスマホちゃんですが、彼女のドラマの魅せ方が匠だなぁと惚れ惚れします……ドゥヤッガオは過去を吐露するシーンとかありましたけど、スマホちゃんは断片的な台詞と表情だけで説得力出してますからねぇ……戦慄しかない……。最終決戦でキラーサボテンと対峙し、「……ごめん」と言ってスマホを投げだして「スマホなめんな!」と叫ぶシーンがすごく印象的です。投げ出す寸前、悼むような顔をしているのを見て、スマホっていうのは彼女の心の拠り所で、相棒だったんだなぁ、っていうのが伝わってきて……きっと思春期で家族と上手くいかないときにスマホだけが心を許せる存在だったんだなぁと思うと……そしてそれを放り投げてまで町を救おうとしている姿を見ると……そりゃもう感動ですよ……。

 マリアッチの歌を背景に囮役を引き受けるレインボー仮面の勇姿もかっこいいですし、また、「私がマダクエルヨバカ防衛隊のリーダーだ!」と様々な想いを吹っ切ってクイーンサボテンに突撃してくる町長とか、マジにカタルシスですよ……極めつけに、止めを刺したのがかすかべ防衛隊バッチって……ちょっと……もおおおおお! おみそれしました……。

 そんで、細かいところがホントクレしんのキャラ達だなぁって感嘆するんですよね。冒頭で引っ越しのことを知ったネネちゃんが「うそよ! しんちゃんのパパは係長でしょう? 海外赴任なんかするわけないわ!」とか言い出すの……最高にネネちゃん……。グルメサバイバルでもキャラクター監修をうえのきみこ氏が担当されてたみたいで、納得。キャラクターたちがそれぞれの個性を最大に発揮して、行き届いた構成の中物語をひた走る、というのは極上のエンターテイメントだなぁ、と惚れ惚れする次第であります(ゲストキャラが比較的多めで、変に突出した印象にならないのも野原一家を埋もれさせない配慮、なのかな。技だな。技)。


【25周年おめでとう!】
『映画 クレヨンしんちゃん』を勝手に振り返ってオススメしてみた。

◆目次◆
(4/1以降1日1ページ分開放されます)

-まえがき-
ヘンダーランドの大冒険
暗黒タマタマ大追跡
電撃!ブタのヒヅメ大作戦
嵐を呼ぶジャングル
嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲
嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦 
伝説を呼ぶ踊れ!アミーゴ! 
嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾! 
嵐を呼ぶ 黄金のスパイ大作戦 
嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス 
バカうまっ!B級グルメサバイバル!! 
オラの引越し物語 サボテン大襲撃 
-あとがき- 


おねショタ 創作小説 オリジナル ファンタジー
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一次創作小説を書いています。

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◆リンクについて
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◆作品
当ブログ及び小説家になろうにて、『ミス・アンダーソンの安穏なる日々』『八奈結び商店街を歩いてみれば』を連載しました。前者はおねショタ小説で、2017年7月に電撃文庫より刊行されました(無敵の女傭兵ミス・アンダーソンを抹殺すべく派遣された羊ショタ執事悪魔(レベル1)のどたばたコメディ)。後者は大阪のどっかにある商店街が舞台のなにわ人情お約束劇です。

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