回り込み解除

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

回り込み解除

グロリア表紙のコピー

※※この作品はR-15です※※
この物語には一部性的行為・犯罪行為を示唆する描写が含まれます。
本作は未成年者の性行為を奨励するものでも、また如何なる犯罪行為を肯定するものでもありません。


『グロリア・リリィの庭』
COMITIA109【こんぽた。(て15a)】にて新刊頒布です!

【A6|300円|78P COMITIA109にて初回発行、以降COMITIA・文学フリマ等で頒布】


+++++++++++++++++++++++

「“王子様”は“お姫様”の前で泣くことが出来ない。
だって“王子様”は完全で、無敵で、すべてを護るものでないといけないから。
だから、わたしは“王子様”が泣くことができる、その居場所になる――」


自身の内面を隠匿し続けてきた女子高生・鮎川砂奈は、
《グロリア・リリィ》と揶揄される同級生、立花優理のある秘密を知る。

優理の歪な実態に翻弄されながらもカメラを手にし、彼女の裸体をファインダーに収め続ける砂奈。

誰からも忘れられた旧校舎で重ねられるふたりの逢瀬のその先に、
待つのは破綻か諦観か、それとも――。


これは“王子様”も“お姫様”もいない、その庭の秘め事。

+++++++++++++++++++++++

表紙素材ご提供
すもも様【3074558】、minato様【3412863】、男気様【26492】(※いずれもpixiv ID)



※※追記からお試しで OVER TUREと本編の一部 をお読みいただけます※※
(――本文“OVER TURE“より)

 そもそも、〝王子様〟というヤツが嫌いだった。


 小学三年生の時に感想文の課題に指定された本のうち、たまたま母親が持っていた物を読んだ時、はっきり自覚した。それはベタな空想物語で、西欧か何かの民話がベースになっていて、要するに王子様がお姫様を悪者から救い出すという筋だった。甘ったるい文章も、きらびやかな挿し絵も、砂奈(さな)は何もかもが気に喰わなかった。それが却って面白く、思いのままを感想文にぶつけてやった。


『めちゃくちゃっていうかありえないっていうか、コートームケイっていうんですかこういうの? ハリウッドの爆発脱出モンとか笑えるからまだ許せるけど、この本はマジ無理。おだてられていい気になって、一回も見たことない女のために頑張っちゃう王子様(笑) 下心見えすぎなんだよキショい。大体、女も女でどうして男が助けに来るまで何にもしないわけ? 自分でちょっとは何とかしようとか思わないわけ? 全部周りの奴らのせいにしてるくせに、周りに奴らをアテにしすぎ。あーもうホント、王子様だのお姫様だの、気持ち悪い』


 提出したその日に、職員室に呼び出された。

 初老で度の強い眼鏡をかけた担任が眉間を指でしごきながら、「確かに先生な、自由に感想文を書けとは言ったが…これはちょっとどうかと思うぞ。まだお前には早いかと思うが、こういう態度をむき出しにしていると社会に出た時に」云々と、見せかけだけ熱いお説教をコンコンと繰り出すのを三十分間、右から左に聞き流しながら、砂奈はぼーっと考えていた。

 ああ、あたし社会に向いてねーんだわ、と。

 歳の割に周囲より少し精神の成熟が早かった彼女は、薄々それを感じ取ってはいた。自分の考えが周りと食い違っていて、変なものを見るような苦笑を投げかけてくるのを、どうしたものかと思っていた。特に、アイドルだのなんだのに騒いでいるのが、どうしても理解できなかった。それは硬派を気取って興味ないフリしている女子とも、なんだかちょっと違うのだった。試しに雑誌なんかを見てみると、アイドルのピンナップの隣のページでシャンプーの広告に出ている女優の方に不思議と目が行ってしまうのだ。

 なので、悟ってからは早かった。自分が世間と違っているなら、叩かれるばかりでいいことなんて一つもない。ならありのままの自分なんて出すのは止めて、周囲の様子を窺って、適当に追従しておけばいい。


 どうせ誰も理解できない。理解しようともしない。そんな自分は、自分だけがわかればいい。
 それが十七歳の今日に至るまでの、鮎川砂奈の内実。


 そしてこれはそんな彼女が《グロリア・リリィ》と出逢う物語。
 ふたりが〝王子様〟のいない庭で過ごした、そう、ほんの束の間の―― 



========================================


(――本文“Ⅲ”p45-47より)


 この時も、一瞬悲しげに眼を伏せただけで、優理は結局砂奈に従った。体を右に傾け、腕を背に回しブラジャーのホックを外す。浮いたカップの下に潜らせた手のひらを鎖骨の辺りまで上らせれば、小ぶりだが張りのある乳房が姿を見せた。すかさずそれを、砂奈のカメラが収める。


(何が〝王子様〟よ…単に金ヅル手放したくないだけでしょ? バカじゃないの、こいつ)


 そういう侮りが沸々と胸にたぎる。だが、こうまでして守りたい金ヅルとはどれほどのものなのか――その疑問が砂奈の口を開かせた。


「ねぇ、あんた今までにどんぐらい稼いだの?」
「え?」
「〝王子様〟からどんだけ金もらったかって聞いてるの」



 パチパチと優理は目を瞬かせた。ここにきてようやく、眠気が醒めたようだった。
 でも優理が次に浮かべたのはやっぱり、何を言っているのかわからない子どもに向けるようなあの笑みだった。


「もらったことないよ」
「は? ああ、現物支給ってわけ? ブランドもんとか…あ、ひょっとしてマンションだったりして」


 自分で言いながら傑作だと、砂奈は品の悪い笑いを立てた。
 だが対する優理は、凪いだ湖面のような穏やかさで頭を振った。


「〝王子様〟から何かをもらったことは、一度もないよ」
「……は? いや、ありえないでしょ」


 乾いた笑いを含んだ砂奈の言葉は、少し強さを増した雨の音に消え入った。
 優理が視線を、天井に向ける。

 そしてどこか遠い昔を眺めるように、


「〝王子様〟は、いつもかわいそう」


 そう言う。


「大事なものを護るために闘って、血を流して、やっとのことで家に帰っても、さらにその次を望まれてばかり」


 雨の音は大きいはずなのに、優理の言葉は砂奈の耳にいやに明瞭に響く。
 優理は薄い唇を、閉じずに、ただ淡々と続ける。


「でも〝お姫様〟の前で〝王子様〟は泣くことが出来ない。辛いって、言うこともできない。だって〝王子様〟は完全で、無敵で、全てを護る者でないといけないから。だから私は、〝王子様〟が泣くことのできる、その居場所になる――」


 それきり、優理は口を噤んだ。
 少しの間、庭の中には雨の音と、肌にねばりつくような湿気が充満するばかりになった。


「…何、それ。なんかの小説?」


 皮肉を喉にひっかけながら、何とか砂奈は口にした。
 その言葉にゆっくりと、優理は砂奈へと視線を移した。

 笑っている。

(ああ――この女、頭おかしいんだ)

 呆然と、砂奈は思った。


⇒⇒⇒本編へ続く

【A6|300円|78P COMITIA109にて初回発行、以降COMITIA・文学フリマ等で頒布】



【おねショタ】【ファンタジー】【オリジナル小説】【創作小説】
スポンサーサイト

テーマ:オリジナル小説
ジャンル:小説・文学

最新記事

カテゴリ

つぶやき

プロフィール

世津路章

Author:世津路章
一次創作小説を書いています。

コメント欄は管理できないため閉じています。

◆リンクについて
当ブログはリンクフリーです。ただし、アダルト・宗教系サイトは除きます。
◆作品
当ブログ及び小説家になろうにて、『ミス・アンダーソンの安穏なる日々』『八奈結び商店街を歩いてみれば』を連載しました。前者はおねショタ小説で、2017年7月に電撃文庫より刊行されました(無敵の女傭兵ミス・アンダーソンを抹殺すべく派遣された羊ショタ執事悪魔(レベル1)のどたばたコメディ)。後者は大阪のどっかにある商店街が舞台のなにわ人情お約束劇です。

アイコンは岡亭みゆ様にご制作頂きました。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文(要返信の場合はその旨をお書きください):

リンク

検索フォーム

QRコード

QR

月別アーカイブ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。